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『七獅武遊録』第8話

町道場の娘・剣谷一女とともに
旅をする御嶽七獅。
行く手に待ちうけていたのは
恐るべき武術の使い手だった・・・・・

---- 掲載期間 ------------
・皇紀2673/04/28~05/13

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岩をも砕く琉球武術

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紫山を下る七獅と一女は
眼下に広がる海老野町に目をとめた。


店は軒を連ね
その前を行商人が行き交い
町は
大いに賑わっていた。
・・・・・下の絵では二人しか歩いていないが
実際は「大いに賑わっていた」のである。

年長者の気前の良さを見せようとしたのか
一女は
落ち着かない七獅の袖を引っ張り
茶店へ連れて行った。


活気のある町並みに
好奇心を刺戟されたか
七獅は見知らぬ地を探訪すべく
駆け出していった。




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やさ男は何を言われようと気にせずに
軽い言葉を弄んで
一女を誘う罠を仕掛ける。


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相手に何を言われようと
取り合わなければよいものを
なまじ腕に自信があるばかりに
罠にかかった一女。


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隙だらけなのは
敢えて技をかけさせて後の先を取る心積もりか。
ならば
思いのほかに練達な術者かもしれない。
一女は少しばかり後悔したのか
喉をゴクリと鳴らした。


対峙すること久し。
動いたのは一女であった。

一女は
滑るがごとく間合いを詰め
渾身の当身を放った。


「そういうことは前もって教えといてよ!」と
一女が胸中で叫んだかどうかは
定かではない。
しかし
野次馬のヒソヒソ話を聞いて
一女の顔色が青ざめたのは確かである。


通りを行く人々の間を器用に縫って
一女はひた走りに走った。
そして
ようやく人気のない原っぱに出た。


一女はよろめきつつも
毒濁弥屋(どくだみや)のアホぼん、京介に言い寄られた一件を
話して聞かせた。
すると
やにわに七獅の顔色はあらたまり・・・・・




京介の隣は果たして用心棒か。
その天を衝くがごとき巨体に
言葉もない一女であった。


人も通わぬ草原に
向かい合う双方。
その間にあるは
ごつい岩石であった。




岩石砕け、石片飛び、一女絶句。


得意げに口上を垂れようとした京介。
しかし
鯨海之進がお構いなしに遮って
なぜか身の上話を始めた。


用心棒、
必ずしも雇い主に従わず。
人を使うことは
かくも難しい。






顔に似合わず
正論を言ってのける鯨海之進。

顔に似合わず
外道まっしぐらの京介。






武人の魂に火が点いたか
闘争の焔(ほむら)が紅蓮となって燃え立った。



あたかも
目前から消えるがごとき七獅の体さばきに
翻弄、
また、
翻弄される鯨海之進。



もとより
一女にも七獅にも
鯨海之進と戦う義理はない。



そもそも
たいていの者ならば、
鯨海之進の巨大な肉体と魁偉な容貌に恐れをなして
回れ右するに違いない。


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さすが
マムシの京介という
二つ名を持つだけあって
ねちっこいことこの上ない。



安全地帯に逃れ得た七獅が
彼方の森を振り返り見れば・・・・・


確かに
京介の頭蓋骨が凹もうが砕け散ろうが
一女らの知ったことではない。

そして二人は
次の旅へと向かった。

おしまい

お断り

『七獅武遊録』は時代考証をはじめ
何から何まで全て虚構です。
だから
「子どもが大人に敵うはずがない」等の
野暮なツッコミはご遠慮ください。

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